動物にやさしい1票 動物にやさしい社会
「動物愛護は単に個人の価値観なので、政治家の善し悪しとは無関係なのでは?」への回答

動物愛護とひとことで言っても、「動物実験・毛皮ファッションに反対」「ヴィーガン・ベジタリアンになる」等、主張はさまざまです。その数々の主張には「個人の価値観」によるものが多いです。

しかしその中でも「法律上の愛護動物(犬・猫を含む)」に関しては、「動物の愛護及び管理に関する法律(以下:動物愛護法)」という法律が定められており、自治体行政にはそれに応じた役割が求められています。

まず、動物愛護法において、行政には人と動物が共生する社会の実現のために、動物愛護法の基本理念に則り、適切に与えられた権限を行使することが求められていまます。

環境省は動物愛護法に基づき、「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」(2006年10月31日)をとりまとめています。(動物愛護法5条1項)
これに基づき、都道府県等は地域の実情を踏まえ、それらの基本的方向性や中長期的な目標を明確化するとともに、「動物愛護管理推進計画」を策定するものとされています。(同法6条1項)

その「動物愛護管理推進計画」は、各都道府県等において計画期間を原則として2014年4月1日~2024年3月31日の10年間として策定されることになっています。

また、都道府県は基本指針に即して地域の実情に応じ、またあらかじめ関係市町村の意見を聴いたうえで、「動物愛護管理推進計画」を策定することとされています。

例:平成26年 東京都動物愛護管理推進計画---東京都福祉保健局

基本指針においては、今後の施策展開の方向として2023年までに、以下の取組みが実施されるべきであるとしています。その一部を抜粋、要約します。

(1) 普及啓発
国および地方公共団体は動物の愛護および管理に関する教育活動、広報活動等を実施することとされています。
特に飼い主等の責務のうち、終生飼養や適切な繁殖制限措置を講ずることについて、積極的に広報を行うことが求められています。

(2) 適正飼養の推進による動物の健康と安全の確保
行政の適正飼養の推進等により、2023年度の都道府県等の犬猫の引取数について、2004年度比75%減となる、おおむね10万頭をめざすとされています。また、殺処分のさらなる減少を図るともされています。昨今、多頭飼育が社会問題になっていますが、それもここに含まれます。

(3) 動物による危害や迷惑問題の防止
住宅密集地において、飼い主のいない猫に不妊去勢手術を施して地域住民の理解を図るなど、飼い主のいない猫をうみださないとする、いわゆる「地域猫」対策を推進するとされています。

(4) 所有明示(個体識別)措置の推進
マイクロチップの普及の推進により、犬猫に関する所持明示の実施率の増加を図ることとされてます。

(5) 動物取扱業の適正化

(8) 災害時対策
特に東日本大震災をきっかけとして、地震等の緊急災害時における災地に取り残された動物の収容や餌の確保、特定動物の逸走の防止や捕獲等の措置が、関係機関等の連携の下に迅速・安全かつ適切に行われることが必要であり、地域性・災害の種類に応じた準備態勢を平素から確保しておく必要がある、としています。

環境省_動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針

上記「基本指針(2)」で示した通り、都道府県等は犬猫の引取数を目標に近づける取り組みを行い、同時に譲渡事業などによる、殺処分の更なる減少も推し進めなければなりません。

よって、2019年の動物愛護法改正で、中核市以上の自治体と保健所設置市に動物愛護センターの機能を持つことが義務付けられ、同センターは犬猫の譲渡を行う施設であることなどの業務内容が規定されました。

言うまでもなく、これら全ての事業運営費は税金です。
動物愛好家からの寄付とは違い、動物を苦手とする方も含む、全ての納税者から徴収した血税です。
つまり、これらは「動物愛護=個人の価値観」ではなく、環境省が「環境問題の一環」と位置づけ進めている「政策」なのです。

国と自治体の予算に基づく事業である以上、首長が「動物愛護?譲渡会?何のこっちゃ?」では話にならないのです。


大量殺処分が当たり前だった昭和時代とは違い、現在では都道府県等は「所有者のいる犬猫」及び「所有者のいない犬猫」のどちらにおいても、(その状況に応じて)引き取りを拒否できるようにもなりました。

かと言い、我々の生活の場である街中を野良猫だらけにするという訳ではありません。その為に生まれたのが、「基本指針(3)」で触れている「地域猫活動」です。

地域猫活動とは?

地域猫活動について|公益財団法人 日本動物愛護協会
地域猫活動 - 環境省(PDFファイルです)

動物が好き・苦手な住民双方が地域で合意形成することが重要となる地域猫活動ですが、それに欠かせないのが行政のサポートです。
主には不妊去勢手術の助成、住民間でのトラブル解決に向けた「地域猫活動」の啓発などがあります。
つまり、これらは行政が取り組むべき地域環境問題であり、ひいては地域共生社会の実現への一環とも言えます。

町の片隅で生まれてしまった飼い主のいない子猫をめぐり、大人たちが「迷惑だから保健所に引取らせて殺処分させろ!」と言い争っている地域と、住民間で合意形成され穏やかに(残酷でない形で)飼い主のいない猫を減らしていく地域。
どちらの地域で子供たちは育つべきだと思いますか?。

その地域共生社会の実現へのイニシアチブをとるべきは、基礎自治体の首長に他なりません。

「首長の意識によって、各自治体の(動物愛護管理行政の)がんばり具合にものすごい差がある。」
超党派「猫の殺処分ゼロを目指す動物愛護議員連盟」の所属議員鼎談(司会 太田匡彦)より

インドの非暴力運動の指導者である、マハトマ・ガンジーは「国の偉大さと道徳的発展は、その国における動物の扱い方で判る」との言葉を残したとされています※。
動物をどのように扱うかは、その国の文化の高さを表すことを意味し、「国」の部分を「自治体」と置き換えても、この言葉の真意は変わりません。

あえて厳しい言い方をすれば、2022年にもなった現在、動物愛護政策について全く無頓着な自治体首長は、
「よほど地域環境問題に疎い」か
「よほど動物福祉に無関心」か
「よほど時流に鈍感」か
のいずれか、もしくはその全てだと言わざるを得ません。

それは首長の個人的な価値観とは関係なく、全ての地域住民の為、解決に向けて取り組むべき現代の地域環境問題のひとつなのです。


参考:動物愛護法入門〔第2版〕(共著)民事法研究会
参考:日本の動物政策 打越綾子 (著) ナカニシヤ出版
参考:日本の動物法 第2版-青木人志 (著) 東京大学出版会
参考:動物保護入門 (共著) 世界思想社
参考:人と動物の関係を考える (共著) ナカニシヤ出版
参考 :「奴隷」になった犬、そして猫 太田匡彦 (著) 朝日新聞出版
参考:日本の動物観 (共著) 東京大学出版社

※ ガンジー本人の言葉であったかの考察は複数説あります。当サイトでの引用は、「日本の動物観  東京大学出版社」のP70を出典元とします。

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